連載「人間関係を滑らかにする『言葉』のおけいこ」第2回 | 福岡県久留米市 久留米大学前駅【松本コミュニケーション研究所】

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連載「人間関係を滑らかにする『言葉』のおけいこ」第2回

2020/02/13

Lessen 2 すみません

自分のために言葉を選ぶことでストレスを軽減させ、安全な日常生活を送るための言葉のおけいこ、今回もよろしくお願いいたします!

 

 

 

言葉はセルフイメージの現れ

「『ありがとう』を言えたら望ましいのであろう場面において『ありがとう』ではなく『すみません』が出てしまう。それしか出てこない」という人に影響しているのは「低く見積もられている自己肯定感」かもしれません。

 

 

あなたの何らかの言行に助けられたり感謝を覚えたりした人が、その言行はもちろん、行ったあなたに対して評価や好意を伝えてくれた時、自分の価値に疑問や不安を抱いている人は、「自分にはそんな評価や好意、もったいないことです。すみません」といった恐縮の意味で「すみません」が口から出てしまう…。さらに、相手の思いを受け取れない自分に肩を落とし、相手からの評価や好意ですら、自己肯定感を下げる理由にもなってしまう…。

 

 

 

このように、自己肯定感は自分が受け取る言葉にも影響を及ぼしますが、使わせる言葉にも同様です。

 

 

 

例えば、相手に「ありがとう」を伝えたいと思った時に、「相手のそれが自分にとってどうだったかを自分(なんか)が評価するなんて…」と、自分の感覚や言葉に自ら疑いをかけ、伝えることを躊躇わせ、言葉を飲み込ませ、あなたの世界から「ありがとう」を遠ざけてしまいます。

 

 

 

「すみません」にみえる一面

「人に迷惑をかけないように」「嫌われないように」という教えを受けてきた人は少なくないと思います。ただ、その教えについて「そうするのは自分を大切にするためだよ」と、そこまでの背景を聞かされてきた人は多くはないかもしれません。

 

 

 

一見、自分よりも人を大事にしなさいと言われているように思えるこの教えに真っ直ぐであれば、自分を後回しにするのはもちろん、「すみません」という言葉で相手をたてようとする気持ちになっても仕方がないのかもしれません。

 

 

 

同時に、相手の好意や評価に対し、自分を小さく見積もった恐縮の質がただよう「すみません」を返すことで、「こちらにあなたと戦う意思はありません。私はあなたにとって安全な人間です」を表明でき、相手に嫌われず、かつ攻撃も受けず、安全圏にいられるといった、無意識レベルでの自己防衛を発動しているのかもしれません。

 

 

 

ここまで見てくると、「すみません」は本当に自己肯定感の低い人が用いる可能性の高い言葉なのかどうか疑問を覚えずにはいられない私がいます。意識できていようといまいと、「すみません」を選んでいる人も、実のとこを自分を大切に思っているのではないのかと思うのです。

 

 

 

どうにかしたいとお望みの方には

「『すみません』が口癖で、どうにかしたい!」という人は、近くに信頼できる人がいたら、例えばその人と遊びや仕事で行動をともにする際、「『すみません』を使ったら、にやっとして」と、依頼してみるのはいかがでしょうか?

 

 

 

ただしこれは、自分の行動に問題があるからダメ出しをし、自分に反省をさせるためではなく、あくまでも双方、ゲーム感覚で楽しむのがコツです。だから、何も言わず、言われず、ただ「にやっ」とする、されるだけです。

 

 

 

誰かに頼むのは…という人は、自分で自分を観察してあげてください。ルールは同じです。言った、使ったからといって、落ち込んだり、自分を責めたりするのではなく、「すみません」に気がついた時、にやっとし、気がついたことを自分に知らせるだけです。それを通じて、どれほど意識していても、人がいかに行動を変えられないか、という現実をまずは知ることです。

 

 

 

長い年月をかけて身に染みついた癖の根強さ・根深さを自覚してあげられれば、ではここから自分にどんな言葉を選ばせ根付かせるか? への関心がより高まり、おけいこへの真剣みも増していくのではないでしょうか

 

 

 

なお、恥ずかしいし、照れるから、といった理由で「ありがとうを言わない」を選んでいる人。それがあなたの選択なのであれば、それで構いません!

 

 

 

自分のために言葉を選ぶという選択肢

前回、「ありがとう」と「すみません」どちらを聴きたいですか? と投げかけました。改めて伺います。あなたは自分により多く、どちらの言葉を聴かせてあげたいですか? 選べるのならば、「自分が聴いて気持ちのよい言葉を自分に聴かせたい」と思っているようでしたら、次のことをやってみてください。

 

 

1.自分の声に耳を傾けはじめる

2.聴こえた声に対して自分はどんな感想を抱くかを確認する

 

 

今日ここから、四六時中やる必要もありませんし、やれる時、やってみようと思った時でよいので、やってみませんか?

 

 

 

相手のためにではなく、自分のために言葉を選び、使う。どちらかと言えば「ありがとう」を聴けた方があくまでも自分が気持ちよさそうなので、「すみません」ではなく「ありがとう」を選び、使う。

 

 

 

そして、言えた自分を自分がどう思ったかを感じてみてください。照れくさいけれど、うれしかったり誇らしく思ったりする自分がいますか? やっぱり、しっくりこない自分がいますか? 自分が何を…と自分を貶めるような言葉が浮かんでしまいますか?

 

 

 

言葉にして、言葉を聴いてみたからこそあなたが感じ、聴き取れる「自分の声・言葉」がそこにはあると思います。「やっぱりしっくりこない」「自分を責めたり貶めるような言葉が浮かぶ」という人は、そうである自分を無視も否定もせず、ただ今、今日その時の自分がそうであることをまずは、受け取ってください。

 

 

 

もちろん、受け取ることができなくても、そんな自分と向き合えなくてもよいです。何度諦めてもよいです。結局、最期まで向き合えないかもしれません。そして、大切なのは、自分が変わ(れ)ること、ではありません

 

 

 

あなたが、自分を気にかけ、自分の力になろうとしているかどうか。実のところ人生でカギとなってくるのはただその1点に尽きると私は考えています。

 

 

 

あなたがあなたのために言葉を選び、使うその先には、あなたとのどんな時間や体験が待っていると思いますか?

 

 

 

次回は「でも…」についてお話します。

今日もご安全に!

 

 

 

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